2014年12月10日水曜日

『背景を描く』という父の教え



父が急死した。

急いで帰った
父の住んでいた家の
父のアトリエスペースには
父の描き残した、孫の画が置いてあった。

父の孫の・・・
僕の息子の・・・


最後のセッション
最後の孝行
最後のおせっかい?

僕は其の画を仕上げて
お棺に入れてあげたいと思い立った。


急な事だったので、通夜の朝にしか時間が無かったけれど
素早くも、じっくりと?
画を仕上げ始めた・・・



肌の色を付け足し
髪の色を付けたし
輪郭を整えて
口に艶をつけて
目を蘇らせて
・・・・・

そして
背景に色を付け始めたとき
父の教えを思い出した・・・


其の教えは、ピカソが描いた道化師の画を
一緒に見ながら
父が教えてくれた事・・・


父:
『智速。この画の背景を見てみろ。
一見単色に見えるこの背景の奥には
ピカソが重ねた色んな色が潜んでるだぞ』

僕:
『ふ〜〜〜ん』

父:
『だからこの一見単色に見えるけど
微妙な普通に売ってる絵の具には無い
この奥深さが出せてるんだ。
そんな風に積み重ねて現れた背景が、
主役である『人物や物』を美しく引き立たせるんだ。
だから、背景は『塗る』んじゃないぞ。『描く』んだ!』

僕:
『うん。』


その時は、何だか難しいこというな〜〜〜位にしか思ってなかった。


でも、今やっと分かり始めた気がしてる・・・

『背景のクオリティー』こそが、人や物事の真実を浮き立たせてくれるって事・・・

その人の歴史が、その人の人物像を形成する様に?


そんな事を想い出しながら、
僕は、父の描き残した・・・

父の孫・・・
僕の息子・・・
の画を仕上げた。


出来上がった?

画を眺めた。



・・・・
『まだまだだな〜〜〜〜・・・』
って父の声が頭の中で響いた・・・
気がした・・・


悔しいな・・・・
でも、嬉しいな・・・


背景の尊さに気付けた・・・


気付けてからが、本番だ。
でっ!
お願いしま〜〜〜〜っす!


って事で、
K+C(Kengo + Chihaya)
のサインを入れた。


何だか、清々しい気持ちになれた・・・・



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